まちの人(聞いてみたい)
「大木町の人は優しい」
大田江梨佳 さん(上木佐木在住)
「私、坂道発進が苦手なので、坂道のない大木町は助かります」と開口一番に “まちの良さ”を語る大田さんは、平成27年4月より「市町村交流職員」として県庁総務部私学振興課から大木町役場産業振興課に派遣されました。
2月に内示があった際、「大木町ってどこ?」と思った大田さんは即答ができませんでした。それから席にもどってインターネットで地図を見て初めて「南だな、小さい町だな」と思ったそうですが、すぐに決意。その日のうちに「行きます」と課長に意思を伝えました。
実際に大木町に家探しに来た際、クルマで廻るうちに、「大丈夫だな、楽しそうだな、ここでならがんばれるな」と自信がわいたそうです。
絵のような景色に感激
4月になって新採用の職員たちと町内の施設を廻るなかでリサイクルプラザを訪れたとき、麦の緑の中に桜のピンクと菜の花の黄色が配色された景色がまるで絵のように見え「何てきれいな景色なんだろう」と感激して写真ばかり撮っていたといいます。
休日、町内のいろんな場所を憶えようとクルマで廻っていると、緑一面の麦畑と突き抜けるような空の間に朝日がのぼる光景に出会い、クルマを降りてしばらく眺めていたとか。
親切な人たちに助けられて
大田さんの役場での仕事は「商工観光担当」。道の駅や商工会関連のイベント、JA福岡大城関連の物産フェアなどに携わりながら、大木町特産のきのこの販売促進も手がけています。都市部の人向けのトマト収穫体験ツアーを企画した際、まずトマトを栽培しているところを教えてもらい、あいさつから始まって企画趣旨を説明して承諾を得る。大田さんが初めて出会う人の誰もが親切にしてくれる。「大木町のひとは優しい」とつくづく思ったそうです。
「この町でまだまだ自分が知らないことばかり。優しい人たちの助けをもらいながら、もっともっと楽しいことを見つけていきたい」と思っています。
「まるで別世界の暮らし方です」
古賀やよい さん (侍島在住)
「とにかく田舎暮らしをしてみたい」という思いから田舎暮らし体験モニターに応募した古賀やよいさん。それまで大木町のことを何も知らず、希望リストの一番左にあった大木町を第一希望に選んだところ見事当選。2012年9月、ほとんど偶然に大木町にかかわることになりました。3週間の空き家体験宿泊が始まる1か月前、ふら~っと訪れてみると、青空のもとに広がる田んぼ。高い建物は何もない!というのが第一印象だったとか。8月には一面緑色だった田んぼも9月の生活がスタートする頃には黄色い稲穂に。
「すこ~んと抜けた感じで景色が開けているのに感動しましたね。西鉄の駅もあって、意外に便利なところだということもわかりました」
時間の流れ方がちがう
福岡市でピアノの先生をしていたやよいさんの体験チェックは、福岡と大木町の二つの拠点で暮らせるものなのかということでした。しかし、暮らし始めてみると、距離が離れていることで、onとoffの切り替えができるということがわかりました。
「まるで別の世界に来たようでした」
大木町と福岡の時間の流れるスピードの違いを、やよいさんはそう表現してくれました。役場から教えてもらった柳川や筑後、大川など周辺の市にあるお店にも行ってみました。大木町にお店は少ないけれど、町の人もみんなそんな楽しみ方をしていることもわかりました。
そんな町の人の暮らしの中で一番感心したのは、ごみの分別収集。「初めて聞いたときには、ちょっと大変だと思ってしまいましたが、なぜ分けるのか、それらがどんなに再利用されているのかという話を聞くうちに、興味深くなりました。これまで、ごみのことなんて考えたことがなかったからですね」
友達を呼んで庭でバーベキューしたりして、3週間はあっという間に過ぎていきました。体験宿泊が終わる頃には、金銭的にゆるせば2つの拠点をもって暮らすのもわるくないと思うようになりました。そんな気持ちでいるときに担当の役場職員から紹介されたのが、いまのパートナーの利一さん。同じ役場の職員でした。体験宿泊から1年後の2013年9月に、大木町で結婚生活がスタートしました。
緑に囲まれてピアノを弾く幸せ
現在は、大木町でピアノ教室をしながら、週のうち4日は福岡の教室に通っています。家が広いのでグランドピアノを置けるし、隣のお宅と離れているため周りを気にしなくてもいい。毎日外の緑を眺めながらピアノを弾けるのがとても気持ちいいそうです。
野菜から季節を感じる暮らし
大木町に暮らしの拠点を移して何がスゴイと思ったのか。
「まちのスーパーの野菜は高くてきれいでないので、買えなくなりましたね」
いつも「道の駅おおき」の直売所でしか野菜は買わないというやよいさん。ここで旬の野菜が手に入るし、ご近所からもらえたりもするので、とにかく助かるとか。
「肥りましたね」とうれしそうに話すやよいさん。大木町の暮らしをすっかり居心地よく感じているようです。
「どこに行くにも近い!」
北島勇さん・美香さん(横溝在住)
大木町で小さなパン屋を営む勇さん美香さんご夫婦は、いわばUターン組です。といっても、ご両親が大木町出身であるにもかかわらず転勤族であったため、奥さんの美香さんがこの町に住んだのは中学1、2年生の2年間だけ。東京で日傘のデザインをしていました。一方、勇さんは高校卒業後東京に出て、東京でお店を開くつもりでパンづくりの修行をしていました。中1の同級生だった二人が再会したのは同窓会のとき。
二人が仲良くなっていろいろ話すうちに「大木町に帰るのもいいかな」と思い始めた勇さんと「応援するよ」と言ってくれた美香さんは2011年1月に結婚。その年の7月には念願のお店をオープンします。
大木町がもったいない!
二人のお店は昭和8年に建てられた元銀行の建物。数年間使われていませんでしたが、レトロな造りが気に入って“ほっこり”とした雰囲気のお店に仕立てました。
「この建物に限らず、私は大木町がもったいないと思うんですよね。空気はきれいだし、子育てするには田舎がいい。ここは保育園にすぐ入れます。やっぱり、外に出たからこそわかるこの町の良さがいっぱいあります。ここの町の生活にもっと注目してほしい」
そんなこの町の良さのなかでの一番は、交通の便がいいこと。
「ここは、福岡にも熊本にも佐賀にも“田舎にも”近いんです。駐車場がタダの佐賀空港から東京にも近い!」
2012年8月に誕生した果乃ちゃんを連れて、福岡の動物園に行くよりも渋滞の少ない熊本の動物園に行くことの方が多いとか。
大木町もわるくない
開店前からもそうしていましたが、周辺のまちに出かけては宣伝したりパンを販売したりしていました。今では7月のオープン記念イベントに、町外からも5、600人以上の人が訪れます。この店にくることで、「大木町もわるくないや」と思ってもらえるきっかけになればいいと話す美香さん。
毎朝5時に起きて6時前から3、40種類のパンを焼く勇さんは、天然温泉の「アクアス」でリフレッシュするのが最大の楽しみ。田舎暮らしを最大限楽しんでいる北島家です。
「理想の田舎暮らしを見つけた」
西川典洋 さん(侍島在住)
侍島に引っ越してきて3年になる西川さんは定年退職した後、ハローワークで、大木町の堀(クリーク)についての聞き取り調査をして1冊の本にするという仕事を見つけます。定年後は田舎暮らしをしたいと漠然と思っていたので、早速応募。せっかく調査するなら住んでみようと、2012年4月、空き家を借りることにしました。
何もない!?
けれども、いざ住み始めると、「何もない!」が第一印象だったとか。西川さんが描いていた田舎暮らしは、古い民家の庭先に柿の木や畑があって山に囲まれたような風景でしたから、遠くに山が見えるだけのだだっ広い大木町の景色を目にしてそう思ったのも無理はありません。しかし、そう思いながら空を見上げると、広い空にいくつもの雲が重なっています。
「そうか、何もない『空(くう)』じゃなく、『空(そら)』がいっぱいあるんだと気づきましたね」
そう思うようになると、堀にも広い空が映り込んで、余計空がいっぱい広がっていることに気付きます。好きなカメラのレンズを超広角に替え、夏の雲や秋の夕焼けの写真を撮ってまわりました。大木町には神社も多く、それぞれのお宮で春秋にお祭りがあります。これを撮影してまわるのも楽しみのひとつだそうです。
「大木町に住むことになったとき、柳川や大川、筑後など周辺市の祭りや有明海の夕日を撮れると思いましたが、地元の人がやっている小さな祭りや、堀に映る夕焼けの方が貴重に思えてきました」
お気に入りの図書館
2年目からは役場の嘱託職員として図書館と企画課に勤務することになりました。
「ここの図書館は児童書が充実しているし、毎週『おはなし会』を催すなど、子どもの読書に力を入れています。やっぱり『子育てしやすいまち』を町の方針に掲げているからでしょうか。私は、個人的には民俗学に興味があるので、図書館の本を一種のインデックス代わりに利用しています。大きな図書館に比べれば確かに本の数は少ないけれども、選書がなかなかいいので、けっこうキーワードが見つかりますね」
現在では地域の人たちにもすっかりとけ込んで、祭りや地域の行事にも参加している西川さん、大木町での第二の人生を楽しんでいるようです。